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第四十二稿

 投稿者:名もなき護り手  投稿日:2009年10月26日(月)05時19分21秒
  結局思いつかない。
ただ問題提起だけして丸投げします。
展開作ってくれた人に謎解きは任せる。俺にはどう考えても納得できる理由が思い浮かばなかったっ!!

『意外』、そう思わざるを得なかった。
何が、と問われれば、それは先程の場面、堀川と対峙し、火車から逃げた時の上条の行動と答えよう。
彼の態度から見るに、上条は妹に対してそれほど悪い感情を抱いてはいなかったように思える。しかし、彼は彼女を見捨てた。僕らを自由に動けないようにするために、堀川が彼女を利用していると分りそうなものなのに、堀川が、どんな人間なのか知っているはずなのに。
僕は彼女の信条や、行動様式について上条に話したことはなかった。ゆえに、上条の中の堀川の認識というのは人殺しに他ならず、女子供を見逃す彼女を、上条は知る由もなかっただろう。よしんば堀川が安全だと判断したとしても、あの場所に彼女を置いていけば、彼女がどうなるかなど火を見るより明らかなことのはずだ。
分らない、上条が。上条にとって彼女がまったくもって無価値な存在だったと見るのは難しい。もしそうだったとすれば、あの場であんな反応するのはおかしいはずだ。
何度推論を立てて考えても分らない。親密なものを相手にするものとすれば上条の考えは常軌を逸している。
そこで、はたと気付く、僕は答えの分らないことは推論が出尽くした時点で考えるのをやめるのが信条だったことに。なぜ僕は今もこんなことを考えているのか。推論は出尽くした。これ以上考えても答えが出ないことは分っている。
なのに何故、僕はまだ考えているのだろうか。
上条はこの暗い暗い地の底で、今何を思って行動しているのか。僕は答えが自分の推論の外にあるような気がしてならなかった。
 
 

第四十二稿

 投稿者:名もなき護り手  投稿日:2009年10月26日(月)05時19分12秒
  結局思いつかない。
ただ問題提起だけして丸投げします。
展開作ってくれた人に謎解きは任せる。俺にはどう考えても納得できる理由が思い浮かばなかったっ!!

『意外』、そう思わざるを得なかった。
何が、と問われれば、それは先程の場面、堀川と対峙し、火車から逃げた時の上条の行動と答えよう。
彼の態度から見るに、上条は妹に対してそれほど悪い感情を抱いてはいなかったように思える。しかし、彼は彼女を見捨てた。僕らを自由に動けないようにするために、堀川が彼女を利用していると分りそうなものなのに、堀川が、どんな人間なのか知っているはずなのに。
僕は彼女の信条や、行動様式について上条に話したことはなかった。ゆえに、上条の中の堀川の認識というのは人殺しに他ならず、女子供を見逃す彼女を、上条は知る由もなかっただろう。よしんば堀川が安全だと判断したとしても、あの場所に彼女を置いていけば、彼女がどうなるかなど火を見るより明らかなことのはずだ。
分らない、上条が。上条にとって彼女がまったくもって無価値な存在だったと見るのは難しい。もしそうだったとすれば、あの場であんな反応するのはおかしいはずだ。
何度推論を立てて考えても分らない。親密なものを相手にするものとすれば上条の考えは常軌を逸している。
そこで、はたと気付く、僕は答えの分らないことは推論が出尽くした時点で考えるのをやめるのが信条だったことに。なぜ僕は今もこんなことを考えているのか。推論は出尽くした。これ以上考えても答えが出ないことは分っている。
なのに何故、僕はまだ考えているのだろうか。
上条はこの暗い暗い地の底で、今何を思って行動しているのか。僕は答えが自分の推論の外にあるような気がしてならなかった。
 

第四十一稿

 投稿者:兎紳士  投稿日:2009年10月17日(土)03時31分26秒
  なにも言うまい……


 ―――なんで、星琉がここに?
 その上条の疑問は、声にならなかった。
 上条の義母、つまり星琉の実母は彼のことを嫌っている。自分と義母の間に挟
まれて苦しんでいる星琉を見ていられなくて、彼女の前から姿を消すことを決め
たはずなのに……
 自分の存在は、きっと星琉を苦しめる。
 彼女の顔が見ていられなくて、彼女を不幸にさせたくなくて、上条は星琉から
視線を逸らす。
 だから、その瞬間彼女が悲しそうな表情になったことに、上条は気づかない。
「あらあら、ツレないわねぇ。かわいい妹が、せっかく会いに来てくれたってい
うのに」
 銃声が鳴る。すぐ耳元で鳴った炸裂音に、星琉は身体をすくませる。
 銃弾が、加古の頬を抉った。銃口の向きから弾道を予測し、なんとか急所だけ
は避けることができた。
「怯えちゃって……、かわいいっ!」
 自らの腕のなかで震える星琉に、堀河が言う。
「で・も・安心して。横槍を刺されちゃったりないしない限りは、あなたのお兄
ちゃんを傷つけるつもりはないから」
 そう口に出すと、堀河は銃口を上条に向けた。一気に近づき飛びかかろうとし
ていた上条は、その気勢を挫かれる。
「片腕だっていうのに…。よく頑張りますね、貴女も」
 加古は、額に冷や汗を浮かべていた。名も知らぬ少女と遭遇することも、堀河
に襲撃されることも想定はしていたが、この状況は想定内のなかでも最悪のもの
だった。
 神様にでも、嫌われているのかな?
 そう思って、加古は自嘲した。嫌われていたとて、当然だ。なししろ、いまの
僕は創造神の欠片を相手に戦っているのだから。
「……上条、わかっているな?」
 潜めた声で、加古は上条に問いかける。先程の言葉に込められたメッセージを
正しく理解しているか、と。
 上条は渋々といった風情で、小さく頷く。 どうやら、妹の存在を気にしてい
るらしかった。しかし、妹のためにここに留まるつもりもないらしい。
 どのように考えてその結論に達したかは、加古にはわからなかった。だが、逃
げる意志があるならば、それでいい。
 加古は、唇の端をわずかに歪める。
 堀河の右腕には、ギブスが巻かれていた。それでは拳銃は持てないし、例えギ
ブスをわったとしても咄嗟に拳銃を抜くことはできない。
 どう考えても、堀河が右手に拳銃を構えることは不可能だった。
 ならば、左手で右正面の的を狙うには、その身体ごと振り返らざるを得ない。
 堀河が反応するより早く右側に回り込めれば、そのまま走り抜けて逃げること
ができるかもしれなかった。
 そう考え、上条と加古のふたりは調子を合わせる。
 ふたりが一斉に動きだそうとした、そのときだった―――

 ドゴオォォォォン!
 爆発音が、窓のすぐ外から響いた。
 庭の土が捲れ上がり、裏口の扉が吹き飛ぶ。扉のあったところから土煙が流れ
込み、廊下いっぱいに充満していく。
「ガハハ。いまのは挨拶代わりだぜぇ、コソ泥さんよぉっ!」
「なんだ!?」
 飛び出す直前の姿勢で、固まっていた上条が叫ぶ。その手を取って、加古はも
と来た道に取って返す。
「この状況では、かえって好都合か。ついて来いっ!」
「どういうことだ?」
 加古に手を引かれるまま、再び上条は研究所内を走り出した。複雑な迷路のよ
うに入り組んだ通路を、加古は迷いのない足取りでひたすらに進んでいく。
「さっきの声は、火車焔のものだ。どうやら、ベガの火消し部隊が応援に来たら
しい」
 加古は振り返って、追っ手のついてきていないことを確認する。
「となると、逃げ道は完全に封鎖されていると見ていいだろう。裏口のみじゃな
く、この研究所のすべての出入り口がな」
 目の前のT字路を、右に曲がる。加古から現在の状況を聞いた上条は、当惑の
視線を彼に向ける。
「じゃあ、どうやって脱出するんだ? もしかして、俺にまた銃火のなかに突っ
込めって言うんじゃないだろうな?」
「案ずるな」
 言い切って、加古は二本の指で眼鏡の位置を直す、いつもの仕草をする。それ
から、涼やかな表情で口を開いた。
「―――『モグラの穴』を使う」
「モグラの穴……?」
 その言葉に、上条は首をかしげた。

「ガハハ。いまのは挨拶代わりだぜぇ、コソ泥さんよぉっ!」
 いきなりの爆発に、堀河は咄嗟に星琉のことをかばっていた。その隙に、上条
たちは煙にまぎれて走り去ってしまう。
「この声は―――」
 外から聞こえてきた声に、堀河は顔をしかめた。逃げる上条たちを目で追って
いたが、それと同じくらいこの声の主が癇に触った。
「――火車焔」
 負傷した堀河の代わりに、火消し部隊のリーダーになった男。粗野で野蛮で野
卑、とにかく野という感じの似合うケダモノだった。
「九班、十班はここに残れぇ! 八以下の班は、俺と一緒に楽しい楽しい鬼ごっ
この時間だぜぇ、ついてこいっ! ……ん、おめえは」
 どうやら、向こうも堀河に気付いたみたいだった。星琉を抱き締めたまま、堀
河は突然の乱入者をにらみつける。
「一か月ぶりだったかしら? あなたの殺しには、相変わらず美学の欠片もない
のね」
「はっ、戦場は男の仕事場だぜ? 女だてらにしゃしゃり出てきやがるアバズレ
が、何をほざきやがる!」
 そこまで言ったところで、火車はいったん言葉を切った。まるで、良い悪戯を
思いついた子供みたいに、頬をにやけさせる。まあ、子供というには、その人相
は邪悪過ぎたが。
「おおっと、堀河ぁ。そういえば、おめえボロ負けしたときの怪我が理由で、休
暇もらってるはずだったよなぁ? つまり、おめえにゃ連絡は届いてないわけだ
。なのに、なんでおめえがここにいやがる?」
 男のあまりに下卑た口調に、堀河の腕のなかで星琉が震えていた。堀河の答え
を待つこともせず、間髪入れず火車は話を進める。
「まあ、そんなこたぁどうでもいい。大事なのは、堀河――おめえが侵入者だっ
てことだ。殺しに美学を求める芸術家気取り、前々からおめえのことは気に食わ
なかったんだ。ちょうどいい、ぶっ殺してやるぜ!!」
「あら、奇遇ね。わたしもあなたの無神経なところ、だいっ嫌いだったのよ」
 そう言いながら、堀河は目だけで逃げ道を探していた。女性を殺すのは、彼女
の美学に反する。だが、悔しいことに火車は星琉を守りながら戦える相手ではな
かった。
 堀河は、標的を始末できない殺し屋は二流、それ以前に美学すら守れない殺し
屋は三流だと思っていた。
 いまは、逃げるしかない。
 堀河がその機会を伺っていると、火車が急に周囲の黒服に声をかける。
「おめえらは、逃げてったネズミを追い詰めて絞め殺せ! このネズミは……、
俺の獲物だ」
 その顔に残虐な笑みが浮かぶ。黒服たちが通路の先に消え去るのを、火車は舌
なめずりしながら待っていた。そして、すべての黒服がいなくなったところで口
を開く。
「さあ、狩りの時間だぜぇ」
 ニィと笑うと、火車は懐から手榴弾をほうる。爆風を避けるために堀河は星琉を連れて、通路の角を曲がるしかなかった。
 星琉を角に置いて、堀河は拳銃を構えなおす。爆風が収まる、その瞬間を見計らって引き金を引く。
 相手を捉えた、確かな感触があった。その手応えに、逆に堀河は警戒を強める。あの火車にしては、呆気なさ過ぎる。
「ガハハハハッ!」
 耳障りな哄笑が、砂埃のなかから上がる。堀河の足元に、コロ…コロ……となにかが転がってくる。その正体に気づいた堀河は、さっと角に身を隠した。
 研究所の狭い廊下に、再び爆発音が轟く。その音を耳にする前から、堀河は星琉とともに走り始めていた。
「戦場に美学なんざ、必要ねえ!」
 ふたりの消えた角を見据えながら、火車は叫ぶ。手榴弾を手の平で弄びながら、彼女らのもとに一歩一歩大股で近づいていく。
「おめえのオンボロなんざ、防弾チョッキ一枚つけときゃあ効かねえんだよっ!」
 その言葉に、堀河はほぞを噛んだ。愛用の拳銃が防弾チョッキに効かないのなら、唯一露出している頭部を狙うしかない。堀河はこれ以外の装備をもってないし、これ以外の装備を使うつもりもなかった。
「鬼ごっこってヤツぁ面倒臭くていけねぇ」
 火車はそう愚痴をこぼす。拳銃を使う堀河に対して、彼の武器は爆弾だ。本来、相手を待ち伏せる戦法でこそ、彼の力は発揮されるのだ。
 しかし、今回は緊急で呼び出されたため、罠を張ることができなかった。そして、これこそが彼がいままで火消し部隊の一員として選ばれなかった理由だった。
「待ち伏せなら瞬殺なのによぉ」
 物騒な呟きを漏らしながら、火車はふたりを追いつめていく。堀河は、ただ逃げることしかできなかった。生き残るには頭部を狙うしかないが、そう簡単に火車が狙わせてくれるとも思えない。星琉というお荷物がいる現状では、なおさらだ。
 どこかの部屋に星琉を隠そうと、堀河は鍵の開いている扉を探す。しかし、そんな都合の良い扉がなかなかあるわけもなかった。
「オラオラァ、さっさと逃げねぇと絞め殺しちまうぜぇ!!」
「堀河さん。わたし……、もう駄目………」
 粗い息をつきながら、星琉が言った。その息は絶え絶えで、顔色も真っ青。笑っているヒザに手を置いて、なんとかそれを収めようとしている。
 堀河は、周囲を見回した。彼女は、明らかにもう限界だ。これ以上逃げ回ることはできそうになかった。
「くっ…」
 神に祈るような気持ちで、堀河は手近な扉を開けようとする。
 ――カチッ。
 開いた。堀河は星琉を抱いて、その部屋に入ろうとする。
「なんだぁ? 鬼ごっこはもうおしまいかぁ?」
 下卑た声が、後ろから追いついてくる。火車に、部屋に入ろうとしているところを見られた。これでは、星琉を隠すことはできない。
 火車が、新しい手榴弾を投げた。咄嗟の判断で星琉と一緒に部屋に入ると、堀河はその扉を閉めた。廊下からの振動が、部屋全体を揺らす。
 そこは、レクリエーションルームだった。どうやら、出入り口は彼女たちが入ってきた扉しかないらしい。部屋の右一面はガラス張りだったが、その下には切り立った崖が広がっている。
「たしかに、もう鬼ごっこは終了みたいね」
 状況は、最悪だった。折れそうになる自分の心を励ますために、堀河は軽口をたたく。部屋の隅にあったバーのカウンターに星琉を隠すと、堀河は拳銃を抜いた。
「ごめんなさい、ちょっとだけ待っててね。すぐに済ませちゃうから」
 カウンターの内側でうずくまる星琉にそう声をかけて、堀河はレクリエーションルームの真ん中に立つ。ドアの開く音。堀河は現れた火車に向かって、弾丸を一斉に叩き込んだ。

 少し昔話をしよう。
 当時、堀河真弥はアメリカに住んでいた。一流大学を卒業し、語学も堪能だった彼女は、その能力を買われてベガ・エンタープライゼスのアメリカ支社に勤めていたのだ。
 彼女が優秀な社員だったことが災いしてか、本社はなかなか彼女を国内に戻そうとはしなかった。しかし、堀河はそれでも別にかまわなかった。彼女はなにからなにまで堅苦しい日本よりかは、アメリカのほうが好みだった。
 だから、なのかもしれない。彼女が、現地のアメリカ人と結婚したのは。
 そのころの堀河は、どこにでもいる平凡な女性だった。拳銃を握ったことなんて一度もなかったし、人を殺すことに快感を感じることもなかった。
 結婚してから数年の間は、ふたりは幸せな時間を過ごしていた。でも、その時間は唐突に終わりを迎えることになる。なぜなら、堀河が彼を殺してしまったのだから。
 その日、堀河が帰宅したのは残業のせいで夜遅くだった。旦那はリビングでテレピを見ながら、酒を飲んでいた。外国人にしてはアルコールに弱い旦那を心配して、彼女が声をかけようとした、そのときだった。
 なにがきっかけだったのかは、いまでもわからない。急に立ち上がった旦那が、彼女に襲いかかりだしたのだ。
 いまにして思えば、日本と欧米の習慣や感覚の違いが積み重なって、旦那は鬱憤を溜めていたのかもしれなかった。もしかしたら、結婚生活を幸せに感じていたのは、彼女のほうだけだったのかもしれなかった。とにかく、当時の彼女は旦那の豹変に酷い恐慌状態に陥っていた。
 ―――殺されるかもしれない。
 そのときの彼女は、本気でそう感じていた。旦那の暴力のなかもがく彼女の視界に、ふと写ったのは彼がコレクションしていた数々の銃だった。
 命の危険を感じていた彼女は、迷わずそのなかの一丁を手に取って引き金を引いていた。それはある種、天性の才能だったのかもしれない。放たれた銃弾は、旦那の眉間を正確に貫いていた。
 自分が愛していた男性を撃ち殺した。その事実に、堀河は懊悩した。
 なんで、自分は彼を殺してしまったのか。彼を最後まで信じ通せなかったことに、次々と後悔の念が沸いてくる。このままだと、彼女の心は押し潰されてしまいそうだった。
 だから、彼女は自分に嘘をついた。だから、彼女は狂った。自分は嬉々として、望んで彼のことを撃ち殺したのだと。
 ――後悔なんてしていない。だって、それがわたしの本質なんだから。
 いまでもそのときの拳銃を愛用しているのは、心のどこかで彼との思い出を大切に思っているからかもしれなかった。
 そのあと、彼女はベガ・エンタープライゼスに人殺しの才能と狂気を見込まれ、企業の裏の顔の一員を担うことになるのだが、それはまた別の話である。
 現在の堀河は、ベガの裏の顔の一員である火車に銃口を向けていた。テーブルや柱といった遮蔽物に身を隠し、火車の爆弾をやりすごす。さきほどから何度も銃弾を放っているが、慣れない左手では火車の急所を捉えることはできなかった。
 拳銃に弾丸を装填しながら、彼女はふと考える。あのときから、自分は誰かを想うことができなくなっていた。だからこそ、兄のことを一途に想い続けている星琉のことが、眩しく見えているのかもしれなかった。
 堀河の隠れている柱に向かって、ふたたび手榴弾が投げ込まれる。いつものように避けようとして、視界にもうひとつの手榴弾が映る。
 ひとつふたつみっつ―――。堀河は、手榴弾に囲まれていた。逃げ場がない。
「そろそろ種切れなんでな。本気でいかせてもらうぜぇ!!」
 火車の声とともに、すべての手榴弾が爆発した。堀河は咄嗟に後ろに飛んで、その衝撃をやわらげようとする。しかし、彼女の華奢な身体は窓のほうへと吹き飛ばされてしまう。
「しまった…っ!?」
 そう思ったときには、すでに遅かった。彼女の身体が窓を割り、断崖絶壁へとその四肢を躍らせる。火車焔が勝利を確信して、顔をにやけさせる。
 しかし、堀河の落下はなにかによって中断させられた。重力に捕らわれていた身体
が無理やり止まる、その衝撃が走る。堀河が顔をあげると、そこには彼女の左手を必死に掴む星琉の姿があった。
「星琉ちゃん。あなた、なんで…っ」
「堀河さんは、わたしを助けようとしてくれたから……」
 とはいえ、たかが少女ひとりの力では限界がある。なんとか堀河の落下を食い止めようとする星琉の両手は、力の入れすぎで小刻みに震えていた。そのうえ、星琉の背後からは火車がちかづいてくる。
「ガハハ。悪運の強え女だ、まったく! いま、引導を渡してやるよ」
 昔から変わらない、粗野で野蛮で野卑な笑い声が室内に響く。これでこの癇に触る笑いを聞くこともなくなるのか、と堀河はちよっとだけ気が楽になった。火車が星琉のすぐ背中に立ったところで、堀河は口を開く。
「ゴメンね。星琉ちゃん」
 短く謝ると、彼女は星琉の手を強引に振り払った。手にしていた拳銃は、爆発の衝撃で手放してしまっていた。身体が自由落下を始めるなか、堀河は二丁目の拳銃を抜き撃鉄を起こす。
 そして、引き金を引く。
 堀河の銃弾は、火車の眉間を正確に撃ち抜いていた。旦那にそうしたのと同じように。
 火車の身体が後ろに倒れる。彼女のはるか頭上では、星琉がなにか言いたそうな顔をしていた。
 星琉は希望だった。堀河にはなしえなかった、大事なひとを最後まで想い通すことができるかもしれない希望。
 そんな彼女を守れたことに満足の笑顔を浮かべながら、堀河真弥は崖下へと消えていった。
 

第四十稿

 投稿者:名もなき護り手  投稿日:2009年10月13日(火)22時59分45秒
  多分今まで書いた中でも最長だと思う…。
なんかすごい疲れた上に、結構暴走をしている気もする。
でも、きっと気にしたら負けなんだと思う。

カスッ!カスッ!
僕が二人に腕をかざすと同時に二つのかすかな音が鳴った。それが鳴ると同時に、扉を開け、外に出てきた研究員と、上条を張り倒した少女の体が揺らぐ。
「その子を支えてやれ。」
押し殺した声を僕は放つ。その声の通りに、上条は動き、今にも倒れそうな少女を抱きかかえた。
それと同時に、僕は倒れてくる研究員の体に身を隠すようにして、かつ、極力彼の体勢を崩さないように体を滑り込ませた。
さて、どうしたものか。首筋に打ち込んだ麻酔針で二人は眠らせてあるが、このまま研究員が動かないとなれば、他の人間がこっちに来るはずだ。
この時点で想定外のことは一つ、この少女の存在だ。どこの誰だか調べてみないことには分からないが、上条の関係者らしいことは分かる。だとすれば、僕が連絡し、脱出の素材として用意した堀川と共にきた可能性が高い。
と、なれば・・・
「上条、時間がない、合図をするから手はず通りに左へ走れ。相手に向かって、何かを撃つジェスチャーがあれば、なおいい。」
相も変わらずの小さな声。不自然に思われるのは時間の問題だろうが、出来るだけ引き延ばしたい。
「この子はどうするんだよ!?」
「そこに置いていけ、後で回収する。」
「逃げながら回収なんてできるのかよ?」
「逃げる必要などない、今はまだ、な。」
立て続けに発せられる上条の質問に矢継ぎ早に僕は答えていく。
だが、彼が納得するまで説明している暇はなかった。
「おい、誰かいたのか?」
一向に言葉を発しない研究員に業を煮やしたのか、他の研究員が声をかけてきたのだ。
そして、その言葉と時を同じくして、上条は少女を壁に立てかけ終えていた。
「上条、ゴー。」
合図と同時に上条が部屋に飛び込む、そして何かを撃つかのようなジェスチャーとともに壁に沿って左へ走り始めた。律儀に言ったことを守ってるのか、時折「バン!バン!」という声も聞こえてくる。
上条の乱入によって、部屋は騒然となり、「撃て!」だの、「殺せ!」だの物騒な言葉が中から聞こえてくる。
ドドドドドドドッドドドドッ!!!
寸刻置いて、無数の銃声が響く。銃声と破壊音から察するに、どうやら重役のSP共は、化け物みたいな銃を用意してきているらしい。
(さて、注意をひきつけてもらっているうち(あいつが死なないうち)に僕の仕事をこなさないとな。)
素早く、音を立てずに麻酔で眠っている研究員の影から抜け出す。後ろで研究員の体が倒れ伏したようだが、その音は無数の銃声でかき消されてしまった。
低い姿勢で部屋に入る。中にいるのは白衣の研究員2名とSPが5名、研究主任と重役が1名ずつ。
銃を持ったSPに素早く狙いを定める。みな上条に夢中でこちらには気付いていないようだ。
カカスッ!カカスッ!カスッ!
袖の下に仕込んだ麻酔銃から2×2+1の麻酔針が飛ぶ。彼らの首筋に命中した針は、それぞれ彼らを夢の世界へといざなっていった。いくら屈強であろうとも、首筋に打ちこめば、眠らせるのはたやすい。
残りは研究員二名と研究主任一人に重役一人。
カカッ!
うち研究員二名には用はないから麻酔針で倒れてもらう。と、同時に上条が機材の上からから降りてきた。彼の顔は蒼白で、運動の汗か、冷や汗なのか分からないが、大粒の汗が額から滴っていた。
この部屋は壁一面がモニターとキーボードで埋め尽くされているから、上条は逃走範囲を広げるためにキーボードの上を縦横無尽に走り回ったのだろう。銃撃によって破壊されたのも相まって、壊れたキーボードやモニタがそこら中に散乱している。
(死ぬかと思った、マジで死ぬかと思った‥‥。)
何か聞こえたような気がするけど気のせいだろう。
そして全てが終わった後、ようやく重役が口を開いた。
「な、何だお前たちは!!?」
いかにも怒り心頭といった感じで、顔が真っ赤だ。肥満体の体系も相まってダルマに見えてくる。
「どうも、誘拐犯です。」
にっこりとしながら僕は言う。こういう瞬間が僕は好きだ。自分の思い通りにいったという実感。それが僕の心を満たしてくれる。
だが、そう言う時にこそ警戒が大事だということも僕は知っていた。だから、気は緩めない。最後の最後まで気を抜くことはしない。
ここまで派手にやったのだ、流石に自分たちのしていることはバレている。だが、バレることは想定済みだ。だからこそ、堀川を使って騒ぎを起こさせた。執念深い彼女のことだ、僕らがいるとなれば飛んでくると思っていた。向こうに注意がいっている間は、ある程度こちらに対する注意をそらすことができる。研究所内の警備の全て、とはいかないが五割以上はひきつけられるはずだ。なにせ、相手はあの堀川女史なのだから。
だが、時間がないことに変わりはない。とっとと終わらせてとっとと逃げなければいけないことに変わりはない。
「さて、研究主任さん、死にたくなければデータと、その重役さんの身柄を頂きましょうか。」
「え・・・・?」
「もう一度だけ言います。死にたくなければデータと、その重役さんを渡して下さい。」
「え、あ。」
「おい!貴様!まさか渡す気じゃないだろうな!?」
重役の言葉に研究主任が委縮する。そこで僕はとどめの一言を放った。
「死にたいんですね?そこに倒れ伏しているSPや研究員のようになりたいとおっしゃりますか。」
手を、正確には麻酔銃を主任の方向に向ける。
「あ、あ、わ、分った!渡す!渡すから!」
「きっ、貴様!!何を言っておる!?」
「重役さんも死にたくなければちゃんと私たちについてきて下さいね。拒否するなら死ぬことになりますよ。所詮、あなたなどデータのついでなんですから。」
ついでであることの強調。ここは重役の命が軽いものだと思わせることが重要だ。逆らったら殺される、そう思わせることが。
「ぐぐぅ・・・!」
それきり重役は押し黙ってしまった。本当に骨のある人間ならば、自害でもしただろうに、なさけない限りだな。
それから1分くらい経っただろうか。研究主任はすべてのプロテクトを外したようだ。
「プロテクトは外した。どのデータが要るんだ?」
「いや、プロテクトさえ外してくれれば後は自分でやる。上条。」
ポンと小型のポケット拳銃を投げて渡す。主任はもう利用価値が薄いから眠らせてもいいが、何かトラブルがあった時に困るからな、この作業が終わるまでは活かしておいた方がいいだろう。
「そいつらがおかしな動きを見せたら撃て。容赦はするな。」
「あ、ああ・・・。」
カタカタカタカタ。
研究所のデータをインターネットを介して自らのサーバに送る。もちろん送り先である僕のサーバは通常の方法ではアクセスできないように厳重なプロテクトがかけてある。人間の盲点を突くようなものが、それこそ何百重にだ。僕はそのプロテクトを、空気を吸うかの様に解除していく。
「さて、送信、と。」
十数秒の後にエンターキーを押す。出来れば転送が終わるまでは此処に居たいが、そんな時間はない。最後に、このPCにある程度のプロテクトをかけておく。3~4時間もあれば解かれてしまうだろうが、転送が終わり、サーバのプロテクトを掛け直すには十分な時間だ。
「これでいい。」
その一言を言い終わると同時に研究主任に麻酔針が飛んだ。こいつにもう用はない。
「さぁ、いくぞ。上条、そして重役さん。」
僕の言葉に重役が憎々しげに唇を噛む。
「ぐ、ぐぬぬ・・・、貴様らなど警備の物たちがくれば・・・!」
「その時はあなたを人質にしてやり過ごさせていただきますよ。」
重役の顔が見る見るうちに青くなる。
「お前、ほんとに容赦ないな・・・。」
「殺されかけた相手にそれを言えるお前は逆の意味で大概だがな。さぁ、時間がない、急ぐぞ!」
「ああ!」
部屋の外の少女を回収し、単調な廊下をひた走る。もちろん少女を背負っているのは、直接的な戦力にならない上条だ。
向かうは爆発が起こった場所、つまりは堀川たちの侵入場所だ。恐らく、彼女は中で僕らを探しているはずだ。
そう考えて僕は少し口角を歪めた。
恐らく、と表現したからにはそれは不確定の情報であることを示している。彼女ならどうするか、彼女が僕の予想通りの頭なら、研究所内に侵入して管制室を目指しているようだろう。そして、彼女が僕の予想より頭が回り、かつ頭が壊れていたとしたなら・・・。
「あらぁ、遅かったじゃない。」
爆破された場所に辿り着いた矢先に、声がかけられる。
「わざわざずっとここで待っていてあげたのよ?」
そこで待っていたのは、ほかならぬ堀川真弥その人だった。その周囲には二十数人の血を流した黒服の男たちが転がっている。恐らく騒ぎを聞きつけて集まって来た警備を片っ端から倒していったのだろう。
「出来れば待っていないで探しに来て欲しかったんだけどね・・・。」
想定内であるけれど想定外、そんな言葉がしっくりくる状況だった。出来ればそうであって欲しいという希望が通らなかった、そんな時に感じる焦燥感。どうすればいいのか、自分が今出来得る最善を必死で検索する。
「あら、恋人には自分から来て欲しいタイプ?意外だわ、あなたは自分からいくタイプだと思っていたけれど。」
誰が恋人だ。だが、こんなバカな話であろうとも、考える時間は少しでもほしい。
「いやぁ、本命一筋なので、他の女の方には興味がな・・・。」
「ほっ、堀川!!私を助けろ!!今すぐだ!!そうすればお前を元の役職に戻してやるぞ!」
僕が軽口を叩いた瞬間に、重役がまくし立てる。
堀川はそれを冷ややかに見やると、静かに銃口を重役に向けた。
「なっ、何を…!?」
彼女の細い指が引き金を引く。
パン!
「うっ、ぎゃああああああ!!!」
銃声とともに重役の太ももに穴が開く。地面を芋虫のように転がる彼の口から紡がれる叫び声は、騒がしいことこの上ない。
「いいのかい?仮にも重役なんだろう?」
僕の質問に彼女は顔色一つ変えずに応える。
「いいのよ。どうせ死んでもらうんだから。」
僕らに殺されたことにしておけば波風立たないからって、自分で殺してしまうのはいかがなものか。
「死人に口なしってやつか。酷いねぇ。」
「あらあら、私の職業を知らないのかしら?」
「ああ、人殺しがお仕事でしたね。これは申し訳ない。」
「そう、私の職業は人殺し。だから、坊やたちには死んでもらうわ。」
「そう言わずに…」
「時間稼ぎはもうおしまい。」
僕の言葉に彼女の言葉が割り込む。こちらの意図が分かっていたということか。
「それに、どうせあなたたちは逃げられない。」
彼女がそういうと、彼女の後方に広がる闇の中から、一人の少女が顔を出した。
その少女は、腰まであるロングヘアーに、顔まで隠れてしまいそうな長い前髪、それに瓶底眼鏡という出で立ちだった。
間違いない、彼女は、
「お兄ちゃん…」
「星琉…?」
彼女は上条の妹、上条星琉だ。
 

第三十九稿

 投稿者:兎紳士  投稿日:2009年10月12日(月)09時43分36秒
  総製作時間4時間の傑作。



「―――ん? なんだ?」
 突然の、予想外の事態にそんな言葉が僕の口をついて出た。
 かすかな爆発音。聞こえてきた音の大きさと方向から、それが研究所の裏口付
近からのものであることがわかる。
「……騒がしくなってきたな」
 そう言って、僕は笑った。
 すべてを知る者―――それが、賢者だ。しかし、未来の可能性は無限大にほと
んど等しい。あのとき、こうしていれば――――。その一瞬の選択、例えば僕が
いま息をするかしないかの判断たったひとつで、未来は容易にその姿を変えてし
まう。
 それゆえ、あらゆる未来を知ることができる賢者でも、自分のための最善の未
来を選ぶことはできない。
「愛音だったなら、それができたんだろうけどな……」
 今回は、どうやら彼女たちが動いたらしかった。
「どうかしたのか?」
 僕の態度になにか感づいたのか、上条が口を開く。
「いや、なんでもない。想定の範囲内だ」
 そう答えたが、それだけでは上条を納得させることはできないらしかった。
「本当に大丈夫なのか? 実は想定外の事態が起きてるとか、言うんじゃないだ
ろうな?」
「そんなわけないだろう?」
 わめく彼をどうやって説得するか、僕がそれを考え始めたときだった。
「見つけたッ!!」
 その声が、響き渡ったのは。

 あたしは、無機質な廊下を走っていた。
「ゴホ、ゴホっ!!」
 先ほどから舞っている煙のせいで、目を開けることができない。視界が効かな
い状況で、このひたすらに続く廊下を駆けていく。
 山奥の建物に入った途端、銃をもった集団に襲われた。まず始めに煙幕弾が投
げ込まれ、あたしは上条さんと離れ離れになってしまった。
 いきなりそんな状況になってしまったのでわからないけど、上条さんはもしか
したら堀河さんと一緒にいるのかもしれない。
 あのひとに任せておけば、上条さんはきっと大丈夫だろう。そう思っているは
ずなのに、なぜか心がすっきりしない。
 なんだか、変に胸がもやもやする。どうして、こんなもやもやするのかはよく
わからない。だけど、胸のなかで「寂しい」と「羨ましい」の感情が同居してい
るみたいだった。
 もしかして、知らない場所でひとりにされて、あたしは不安なのだろうか?
それで、あたしも上条さんとふたりでいたかったと思っているのだろうか?
 そう考えるとなんだか余計にさみしくなって、煙が染みた瞳から涙がこぼれて
くる。
 ――――でも。こんなところで諦めるわけにはいかない。
 あたしが、上条さんを救うんだ。このあたし―――御桜友希が。
 いつまで経っても煙の晴れないところを見ると、ここは通気の悪い建物なのだ
ろうか。
 いい加減煙の吸い過ぎで苦しくなった喉が、新鮮な空気を求めている。
 だから、なのかもしれない。
 自然と、あたしの身体はある場所に向かって走っていく。
 その長い道のりのなかで、本当に死んじゃうんじゃないかとも思った。まぶた
の裏に死んだお母さんの顔が浮かぶ。それから、上条さんの顔が浮かんだ。
 なんで、お母さんはともかく上条さんまで?
 そんな風に思ったのは一瞬だった。上条さんの顔が死んだお母さんの顔の次に
浮かぶなんて、なんだか縁起が悪くてあたしは彼女に謝った。
 あたしがそこに辿り着くと、そこからは煙が外へ流れ出していた。
「はあ…はぁ……」
 喉が、肺が、全身で新鮮な空気を吸い込もうと、粗い呼吸を繰り返す。
 恐る恐る目を開けると、周りには誰もいなかった。
 どうやら、上条さんも堀河さんも銃をもった集団も、こっちには来ていないみ
たいだった。
「上条さん、大丈夫かな……?」
 彼女の安否が不安で、あたしはそうひとりごちる。
 ふと気になって煙の流れる先に目をやると、窓ガラスが人間くらいの大きさに
割れていた。これは間違いなく、誰かがここから侵入したあとだった。
「もしかして…!!」
 気がつくと、あたしは再び走り出していた。上条さんは、お兄さんを追ってこ
こまで来たのだ。堀河さんは、上条さんのお兄さんが侵入者だと言っていた。
 おそらく、上条さんのお兄さんがこの窓を通って、中に侵入したのだろう。
 上条さんはそのお兄さんのいるところを目指している。
 ならば、このまま進んでいけば、上条さんを見つけられるかもしれない。
 そう確信したあたしは、直感に任せて廊下を疾走する。
 とある扉の前まで来ると、あたしは叫んだ。
「見つけたッ!!」
 そこには、ふたりの男性がいた。
 見間違えるはずなんかない。
 あたしにはすぐにわかった。アレが上条さんのお兄さんだって。
 お兄さんは、呆気に取られた表情であたしを見ていた。その間の抜けた顔が、
なぜだか癇に触る。
 気が付いたときには、あたしはお兄さんの頬をビンタしていた。
「彼女はあんなにも苦しんでいるのにっ!! それなのに、なんにもしないでのう
のうと!! あなたになんか、あのコは救えない!! あのコを救えるのはあたしな
のにっ!!」

「………は?」
 わけがわからなかった。
 ヤツに繋がる情報をを求めていざ突入というところに、いきなり現れた女。
 その女が、いきなり意味不明なことを言って俺の頬を張ってきたのだ。
 どんなに考えてみても、こんなことをされるような心当たりはなかった。
 と、そんな俺の混乱を加速させるかのように、いまから突入しようとしていた
はずの扉が開く。
「騒がしいな…、誰かいるのか?」
 

第二十八稿目

 投稿者:名もなき護り手  投稿日:2009年10月 8日(木)02時49分27秒
  久々の更新です。
加古はきっと冷徹な奴だって信じてるb
だって、彼は使う者であって、使われる者ではないからなぁ!

ベガ・エンタープライゼスの極秘研究所、その廊下を僕と上条は歩いていた。
廊下は上下左右全てが、おそらく同じ材質であろう金属の板で作られていた。金属光沢を意図的に無くし、ややくすんだ感じの光沢、言うなれば、小学校によくあるステンレス製の手すりのような色になっている。
床はよくある幾何学的な文様が描かれ、壁と天井には文様と、おそらく研究所内の機器を動かしているのであろう電線が、ガラス越しに通っていた。
「しかし、よくあんな無茶なことして気付かれてないな…。」
上条が声をひそめてぼそっと呟く。
「無茶?」
はて、何か無茶なことなどしただろうか。
「普通に泥棒よろしくガラスぶち破ったじゃねぇか!どこに持ってたのか知らんがごついハンマーで!おそらくカメラにも写ってたぞ!」
「ああ、あれのことか?あれなら問題ない。今頃、監視カメラは問題なく異常がないことを示し続けているだろうし、割ってしまった窓なら、誰も見に来ることはない。」
上条の顔が見るからに不機嫌になる。納得がいかないのだろう。
「まず、窓を割った件だが、これに関しては監視カメラにすでに細工を施しておいたから問題はない。今頃あのカメラは、自身が昨日撮った映像を流しているだろうよ。そしてもうひとつ。見周りにばれないかという問題だが、そちらも問題はない。今頃あそこを巡回すべき見張りは、別の誰かに変わっているだろうからな。」
上条の顔が驚きに染まる。
「・・・・・・お前は、どこまで先が見えているんだ。」
「未来なんて見えちゃいないさ。僕は、僕のとりうる最善を常に選んでいるだけ。」
「つまり、ここに俺がいるのにも、ちゃんと意味があるってことなのか?」
「そうだ、お前にはここにいる必要がある。」
そうは言っても、まだ、お前にお前のいる意味を伝えるわけにはいかないがな・・・。
「分かった。」
意外なことに、その理由を聞くことはなく、上条は引き下がった。聞けないであろう空気を読んだのか、それとも、さっきの説明で納得したのか。
そこまで考えて考えることを打ち切る。他人の心なんて分かりはしない。分からないことを考えるのは時間の無駄だ。今は、誤差なくこのミッションを終えなければならないのだ。
「いいか?しっかり僕の後について来い。」
「ああ、分った。」
僕の言葉に上条が答える。だが、一般人が思う『ついて行く』という言葉と、今僕が発した言葉の意味合いは少しばかり違うのだと気づく。
「…一応言っておくが、ついて来いとは言っても、ただ僕の歩いたところを二次元的に沿っていくのはダメだ。三次元的について来るんだ。」
「どう言う意味だ?」
「自分が通る場所の高さにも気を付けろということだ。ここからは監視カメラの視覚と、赤外線センサーをかいくぐって行くことになる。まぁ、赤外線センサーの大半は研究員のいる今の時間は止められているようだがな。」
「監視カメラの方に細工してしまえばいいじゃないか。」
「あそこの監視カメラは、人が通らないことを前提にして昨日の映像を流させているんだ。もし、僕が道中にある全ての監視カメラに細工をしたとすれば、誰も通らないことに違和感を覚えられる可能性がある。」
「なるほど・・・。」
とはいえ、上条の言ったやり方を考えなかったわけではない。なぜなら、この研究所にいる人間が少ないからだ。その理由は主に二つ。ここがエリートしか所属出来ない極秘研究所であるため。そして、もう一つは、情報の漏洩を極力防ぐためだ。秘密を知るものは、少ない方がいい。漏洩したときの対処は、その人数が多ければ多いほどに面倒になるからだ。
「止まれ。」
極力抑えた声。僕の計算だと、後3.17秒から34.55秒の間に、研究者の一団がこの先の通路を通過するはずだ。
出来れば、発見されることは避けたい。まず、騒がれずに事を収拾するのが非常に難しいこと。それが出来たとしても、研究員の不在を気付かれる可能性があるうえ、捕縛し、どこか別の場所に移動した研究員を、他の研究員が見つける可能性もありうる。
ややあって、白衣を着た研究員の一団が廊下を通過していった。
「お前、あいつらが来ることが分かっていたのか…?」
「僕を誰だと思っている?賢者に分からないことなどないのだよ。」
「そうかい。」
やや呆れ顔で上条は言った。もう深くは考えないようにしたようだ。

しばらく規定の道を進むと、前方に照明のトーンを一つ二つ落としたような印象を受ける薄暗い通路があった。この研究所からハックした情報が確かならば、あの先に、ネットを介しての閲覧が不可能なプロテクトがかかったデータと、それを閲覧しているはずの重役がいるはずだ。
「あの先に、ターゲットがいる。いいか、部屋の中に入ったらお前は左へ走れ。」
「左へ…?」
「そう左へだ。死にたくなければ全力で走れ。ターゲットを確保したら、すぐに離脱する。ぬかるなよ?」
「と、とりあえず左へ走ればいいんだろう?そんなことでぬかるなと言われてもな・・・。」
「五体満足でいたいならしっかり走ることだ。一瞬でも足を止めれば無数の銃弾がお前を貫くぞ。」
「・・・・・。」
ま、それでもこいつが死ぬかと言えば、そうでない可能性の方が高いだろうがな。
まったく、便利な盾だよ。こいつは。
 

第二十七稿目

 投稿者:兎紳士  投稿日:2009年 8月15日(土)15時24分33秒
編集済
  うむ。今回は自分なりにはがんばってみたつもり。



 堀河の携帯電話に『研究所に上条隼人が侵入した』という報せが入ったのは、それから数時間後のことだった。
 本来なら、この連絡は社内でもデミウルゴスの欠片の案件を担当する部署にしか来ないはずのものだ。それが、部署から外されたはずの堀河のところにも来た。ということは、まだあの部署の名簿には彼女の名前が残ったままになっているらしい。
 社内のセキュリティという面から見るとマズい話だが、いまはそれで助かった。
 堀河真弥は携帯電話を閉じる。さっそく、彼のもとに行こうとすると、上条星琉に服の裾をつかまれた。
 どうやら、なにか勘づいたらしい。
 どんくさいコだと思っていたが、勘だけは鋭かったようだ。
 上条星琉が、堀河真弥の顔を見上げる。その真摯な眼差しに、彼女は迷った。とりあえずは、研究所に向かうために車を呼ぶことにしたが。
 本音をいうと、堀河は星琉のことが気にいっていた。彼女のようにひたむきにひとりの男のことを想い続けるなんて、いまの彼女には到底できないことだったから。
 ひょっとしたら自分は、快感とともに愛情まで歪めて捻じ曲げてしまっていたのかもしれない。
 堀河の脳裏に、ふとそんな言葉が浮かんだ。
 星琉に『命を賭ける覚悟があるか?』と聞こうとして、堀河は止めた。自身を見上げる彼女の表情を見れば、そんなことは聞かなくても明らかなことだった。
 そして、星琉が来るとなれば、彼女の隣にいる御桜友希もついてくるに違いない。堀河としては彼女を置いていきたいところだったが、この数日で御桜友希がどういう人物なのかはよく理解していた。もし、ここで置き去りにしたとしても星琉をつれていく以上、どうにかして彼女はついてこようとするはずだ。
 ならば、いっそ自分で連れていって目の届く範囲においておいたほうが安全だろう、と堀河は思った。
 ちょうどそのタイミングで到着した車に乗り込むと、堀河は開口一番に聞いた。
「わたしの装備は、ちゃんと持ってきてくれたかしら?」
 運転席に座るのは、堀河の知り合いの社員だった。いざというときのために飼いならしていた男で、いつも彼女に卑屈な笑みを浮かべている。いつもどおりの卑屈な笑みとともに差し出された拳銃を受け取ると、彼女はそれを男の額に突きつけた。
「そう。じゃあ、奥多摩の研究所まで運転をお願いするわ。わたしの他にふたりほど連れがいるけど、気にしないでね」
 そう、ぞっとするほど澄んだ声音でささやく。それから、車の外に待つふたりを見て言った。
「ほら、早く乗りなさい。“彼”は、待っててくれないわよ」
 

第二十六稿目

 投稿者:名もなき護り手  投稿日:2009年 8月 9日(日)15時56分59秒
  はは、本当の意味で何も進んでないぜ。
次回は少し頑張るから、今回はこれで許して下され。
(ぶっちゃけどうやって侵入するんだろ?穴でも掘ってるのか?)

「見ればわかるだろう?重役の乗った車さ。今回の目的は、あれに乗っている人物の確保と、研究所の内部にあるであろうデミウルゴスの欠片についての資料と言うことになる。」
加古はさらっと俺の疑問に答えた。何の緊張も無いかの様に。
「あんな分かりやすい車に乗っているのなら、最初の方は直接車を襲えば良かったんじゃないのか?」
「いや、あの車をそのまま落とすのはかなり困難だ。外見こそあのなりだが、各種防弾性能、特に狙撃に関しては鉄壁と呼んでもいい程の防御を誇っている。米国軍で正式採用されているレミントン社のM700で撃ったとしても、タイヤすら傷つかないだろう。」
「銃のことはよく知らないが、とりあえず無理だってのは分かった。」
「それならいい。さて、これからあそこに侵入するわけだが、何か質問はあるか?」
「質問も何も、俺は、『黙ってついてくればいい』としか言われた覚えがないな。」
俺がそう言うと、加古は気味の悪い笑みを浮かべて、
「ふむ、そうだったな。では、黙ってついてきてもらおうか。」
と、言った。
 

第三十五稿目

 投稿者:achica  投稿日:2009年 8月 3日(月)00時01分18秒
  疲れた…。新しい展開は頭を使う……。
少ないですが勘弁してください。


 あれから一週間が過ぎた。その間に俺のしていたことといえばベッドの上を寝転がり、ただひたすらに回復に努めることばかりで、まったく情けない話だが、事実、前回は“奴”に対して何の手立ても持たずに“奴”の組織に乗り込み手も足も出なかったのだから、加古の言うとおりにするほかは無かった。
 しかし、だからといって何も進展が無かったわけじゃない。この一週間のうちに加古から今回の件に関しての情報を聞けるだけ聞き出した。デミウルゴスの欠片についてより詳しく、また神々の体現者と呼ばれるものの人数やその構成、“奴”の組織とベガ・エンタープライゼスの関係、“奴”が欠片を持つものを集めているその理由、――そして“奴”の能力についても。さすがに賢者などと自称しているだけはあって加古はほとんどの疑問に対して答えを出してくれた。ただ俺が尋ねた中でひとつだけ、加古にも答えられない疑問があった。それは、あの黒色のゴシックロリータ・ドレスに身を包んだ白い髪の少女――亜理栖、眞莉亜、輪廻のことだ。
 “奴”のところから連れ出される時の最後の記憶が、なぜか、俺に微笑んで崩れ落ちる彼女の顔だったから気になっていたのだが、そのことを加古に聞いても奴からは返答は無かった。自称賢者様にも答えられないものがあるんだなと妙に納得しながら、俺は彼女に――いや、彼女たちにもう一度会えないか、もう一度会って一体どういうつもりなのか聞けないかと考えていた。



 俺と加古は今、ベガ・エンタープライゼスの前にいた。加古の所有する車に乗って延々と南に下ること約半日、日本海に面するこの県に入ったのは宵闇が辺りを包もうとする頃だった。ベガの本社ビルとは別に、地方にいくつも部門ごとの子会社や工場があり、その中でも最も古い施設があるのがここだった。隣接する市をひととおり巡り、それから目的の研究所のあるところへと一旦車を進ませ、今そこを眺められる場所で車を停めていた。
 研究所の周辺は周りの山一体がそのまま買い取られ、ベガの私有地となっていた。ここは地理的には県の外れで隣の県との境に位置するらしく、まわりは木々が生い茂る山ばかりで、近くにある隣接する市も県の中央の方の賑わいと比べればとても閑散としていた。
 俺たちは森の中に隠した車の中で研究所周辺を窺っていた。地方の山の中には不釣合いな延々と伸びた高い壁がぐるりと研究所とその他の主要施設を取り囲んでいる。その周りには数十メートルおきに警備員らしき人が配され、煌々とした常夜灯があたりを仄かに照らし出していた。
「なんだ…、ありゃあ…」
 俺は思わず嘆息を漏らす。俺の目に、双眼鏡を通して、鋼鉄の分厚い門が開閉する様子が映されたからだ。そこを、いかにもというような黒塗りのベンツが一台、ゆるゆると進んで行く。
 

第34稿目

 投稿者:兎紳士  投稿日:2009年 7月27日(月)17時00分41秒
  未完成ですが、締め切り過ぎまくってしまったので、上げます。


「ところでさー、友希ってば最近よくあのコに話しかけてるよねー?」
 駅前の繁華街。隣を歩いているクラスメイトが、私に聞いてきた。
「あのコ…って、上条さんのこと?」
 それに対して、私――御桜友希はそう尋ね返した。
 学校からの帰宅途中、少し寄り道をしていつもの友達と一緒に遊んでいるところだった。
「そうそう。よく、あんな暗いコに話しかけてあげられてるよね~。友希、あんたの博愛精神はホント表彰もんだわ。なんでも、噂にエンコーとかやってるらしいじゃない。あのコ」

そんな会話が交わされたのが、数分前。
「ふざけないでっ!!」
 と、激昂した私は、ひとり駅に向かって歩いていた。
 あのコが援助交際? 冗談じゃない。あのコは優しくて純粋なコなんだ。他の誰よりも、私がそれを一番知ってるんだ。
 始めはクラスメイトたちも私を追いかけてきて、機嫌を直すように言っていたが、とりつく島もないのがわかるとどこかに行ってしまった。
 確かに、彼女のあの態度は人に誤解を与えやすいだろう。
 でも、だから、それがどうした? そんな無思慮な誤解と噂がどれほど彼女を苛んでいると思っているのだ、みんなは。だから、だからこそ彼女はあんなにも儚くて―――
「上条さん?」
 向かい側の道に、その儚い存在がいた。
 無理解なクラスメイトとのやりとりにいらついていた私は、思わず彼女に声をかけていた。
「あ…、御桜さん?」
 私の声を聞いて、上条さんは振り返る。
 その無垢なあどけない顔で。
 私の苛立ちは、彼女との偶然の出会いで嘘のように収まっていた。
「? 上条さんの知り合い?」
「あ…、はい。私のクラスメイトで……御桜さんって言います」
 しかし、上条さんの隣にいる女性と彼女が親しげに話していることには、むっとした。
 彼女が自分以外の人間と、そんなふうに会話しているところを見るのは始めてだった。
「御桜友希です」
 なので自然、挨拶もそっけなくなる。目の前にいるスーツ姿の女性に、私はそう自己紹介した。それだけ言うと、すぐに上条さんのほうに顔を向ける。
「それで、上条さんたちはなにしてるの?」
 私の質問に、上条さんは答えづらそうにして口ごもる。
「えっと、その…ね。わたしたち……」
「―――上条さんのお兄さんを探してるのよ」
 おずおずと言いかけた上条さんをさえぎると、スーツの女性が答えた。なぜか、そのことが私の苛立ちをさらにつのらせる。なんとなくだが、彼女とは気が合いそうにない、と思った。
「お兄さん?」
 スーツの女性の言葉に、私はオウム返しに声を上げる。
 では、上条さんがこんな場所にいるのは、お兄さんを探すためなのだろうか? いくら私が誘っても、一緒に帰ってくれたことなんてなかったのに。お兄さんを探すためなら、誰かと一緒に行動するんだ。
 なんとなくだが、いらつく。
 それにしても、この繁華街という場所は彼女には似合わない。誰よりも純粋な彼女には、危険なものが多すぎるのだ。だからこそ、ふたりで一緒に来て、私がいろいろ教えてあげないといかなかったのに。
「それで、あなたは誰なんですか?」
 自分でも明らかに不機嫌だとわかる声で、私はスーツの女性に問いかけた。そのきつい口調に、女性は余裕の笑みをもって口を開く。
「堀河真弥よ。OLをしているわ。なんだか警戒されちゃってるみたいね」
 その朗らかな表情に、少し気勢が削がれる感じがした。ただ、上条さんがふたりで街を歩いているだけなのに、なにをこんなに苛立っているというのか。ましてや、『奪われた』と感じるなどと。
「でも、社会人なのにこんな時間に出歩いていていいんですか?」
 先ほどよりはいくらか険の取れた口調で私は聞いてみる。そうすると、堀河さんは右手を指しながら自嘲の笑みを浮かべた。。
「ちょっと、事故で右手を怪我してしまって。それで、いまは会社のほうから休暇をもらっているのよ」
「それで、上条さんのお兄さんを探している……と」
 私の言葉に、堀河さんはうなずいた。
 それにしても上条さんのお兄さん、か。上条さんとのいままでの付き合いのなかで、なんとなくだがお兄さんの存在が彼女に負の影響を与えていることはわかっていた。彼女は、そのお兄さんを自分から探しているらしい。
「ええ」
 堀河さんの返事を聞いて、私はひとつ決心をすることにした。
「もし良かったら私も上条さんのお兄さん探し、手伝ってもいいかな」
 

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